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百年文庫『汝』(吉屋信子、山本有三、石川達三)

◇2026年6月4日(木)読了。

日本や外国の作家による短編アンソロジー。
漢字一文字の『汝』がイメージされる作品を編んだものらしい。

吉屋信子『もう一人の私』。亡くなった双子の姉の幻影を見る女性。
山本有三『チョコレート』。裕福な家庭に育つも就職先が見つからない男性。
石川達三『自由詩人』。『私』の友人である詩人の破滅を描く。

文字が大きく、読みやすい。シリーズの他の本も読みたい。

小川洋子『そこに工場があるかぎり』

◇2026年6月6日(土)読了。

なによりも小川洋子氏が工場好きであったことが一番の驚きだった。華やかであり繊細なものを好む方だとばかり考えていた。
鉛筆の工場とお菓子の工場についてのお話が印象に残った。
私はものづくりの専門的なことはよく分からなかったから実際に使った・食べたものだと実感を掴みやすかったのだろう。

幸田文『雀の手帖』

◇2026年6月8日(月)読了。

見開き2ページほどに、幸田露伴の娘である幸田文の随筆が載っている。100日分書いたものらしい。食に関するものが多いように見受けられる。作者には意外と毒舌というか、辛口なところもある。美智子さまのご結婚に関する文章なども書かれている。

八木久美子『慈悲深き神の食卓 イスラムを「食」からみる』

◇2026年8月5日(水)読了。

主にエジプトにおけるイスラムの食文化について知ることができる。
日本人が無意識に抱いている断食(ラマダーン)月への印象を払拭するものとなった。
この本を読んで印象に残ったのはグローバル化する現代において、イスラム教徒の人々は強制されたり、住む場所や家族や共同体の影響で自動的に信仰するのではなく、もはや自ら主体的に選び取ってイスラム教徒でいる時代だということだ。このことは私自身が神道や仏教が信仰されている非キリスト教国の日本において「選んで」カトリックを信仰していることとも重なった。

PARCO出版『アンソロジー おやつ』

◇2026年8月28日(金)読了。

様々な作家によるエッセイのアンソロジー。おやつがテーマとなっている。
古川緑波がマカロンの話をしているのが意外だった。もっと最近のお菓子かと勝手に思っていたから。
それにしても、森茉莉のエッセイの上品さは群を抜いている。

いただきがこんがりと、狐色に焦げた皮の上にふりかかっている粉砂糖は舌の上で、春の淡雪よりも早く溶けて、その甘みは捉えることも出来ないうちに消え、卵黄と、牛乳(ミルク)と、ヴァニラの香(にお)いが唇一杯にひろがる滑らかなクリイムは、その日の朝焼かれたものなのに皮になじんで、皮の内側はクリイムの牛乳を吸いこんでしっとりとしている。
(6-7P)

松浦理英子『ヒカリ文集』

◇2026年9月3日(木)読了。

劇団を去った元女優・賀集ヒカリにまつわる思い出を綴った文章という体での小説のようだ。ヒカリは誰からも愛されるような人間であったが、誰のことも愛せなかったのではないかと思う。家庭環境はそこそこに悪いようだった。そのせいで処世術を身につけたのだろうか。今はヒカリが幸せでいられたらいいなと願わずにはいられない。

「でもね、私は家族だって切り捨てるよ。自分が自由に生きるためなら。」
「そうあってほしいと思います。自分をいちばんたいせつにすべきだから。」
(237P)